Mさんへ  永仁の壺事件

1960年頃に日本で起きた贋作事件です。
陶芸に携わる人ならだいたい知っているでしょう。
私は特に深い関心を持っていました。
そしてこの事件を起こした加藤唐九郎という
陶芸家には今だに敬愛の念を抱いています。

鎌倉時代(永仁時代)に焼かれた瓶子(へいし)政で神棚に飾る酒器)
の贋作が国の重要文化財に指定されて、後に瀬戸の陶芸家加藤唐九郎作
の現代ものと判明(本人が名乗り出た)
当時の文部省文化財指定委員会などの権威が失墜した事件です。

その後これについて語られることはありませんでしたので
事件の真相は謎とされていますが・・・・・

私は加藤唐九郎氏の権威に対する挑戦だった、と理解しています。
氏は安土桃山時代の志野焼の復元だけではなく
独自の作風、志野焼(紫志野)を生み出すなど大きな功績を残しました
が、生涯、権威から表彰(人間国宝とか文化勲章)されこととは無縁でした。
こういう生き方に憧れました。
その紫志野を所有しています。
リパッティの取り違え事件は似て非なるものですが、
ステファンカの演奏をリパッティと思い込んで
「流石にリパッティの演奏はいい」などと評価したレコード会社や音楽評論家
の権威が失墜したことでは両者似ています。
レコードのジャケットやライナーノーツには消えないで今だにそう書かれたまま。
そのように書かれたことを鵜呑みにして疑わなかった私自身も問題です。